海を離れ二人は車に戻る。
「もうこんな時間か」
腕時計を確認した樹が零す。
「送るよ」
ぽん、と詩織の頭を撫でて言った。エンジンをかける樹の手を詩織が掴む。
「詩織?」
「……ごはん、一緒に食べよう」
「いいよ。何食べる?」
「……私が作る。」
詩織の言葉に樹が目を丸くする。
「樹が食べたいもの、私が作りたい」
まっすぐ言う詩織に樹は少しだけ口元を緩めた。
「……それは楽しみだ」
そう言ってエンジンをかけ、車を発進させた。
途中でスーパーに寄り、夕飯の買い出しを済ませ、パーキングに車を停めると二人で詩織のマンションへ向かう。
「持つよ」
「重いもの、持たせるわけないでしょ」
そんな他愛もない会話をしながら詩織の部屋の前に立つ。
「あまり綺麗じゃないけど、どうぞ」
詩織は少し照れくさそうにそう言ってドアを開け、樹を中へ促した。
「……お邪魔します」
少し緊張した面持ちで、樹は買い物袋をダイニングテーブルに置く。
「すぐ作っちゃうから、座って待ってて」
詩織は自分の荷物を奥の部屋に置きに行った。戻ってきた詩織はエプロンを身につけ、髪をまとめながらキッチンに立つ。
(かわいい……)
キッチンに立つ詩織の初めて見る姿に、樹は思わず見惚れる。
けれど、どうにも落ち着かない。
促されるままソファに腰を下ろしたものの、初めて入った詩織の部屋が気になって、自然と視線が部屋の中を巡る。
(ここが詩織の家か)
マンションまで送ることは今までもあった。けれど、その先に入ったことは一度もない。
そんな場所に今、自分がいる。
ふと、チェストの上に目が留まった。
「これ……」
そこに置かれていたのは、一緒に映画を見た帰り道、立ち寄ったゲームセンターで取ったイルカのぬいぐるみだった。その隣にはプラネタリウムを一緒に見た日に贈った砂時計。
「……ちゃんと飾ってくれてんだ」
思わず立ち上がり、二つに近づく。
胸の奥がじんわりと温かくなった。
振り返れば、キッチンに立つ詩織を見れば楽しそうに料理をしている。
その横顔を見つめているうちに、自然と口元が緩んだ。
「——ねぇ、なんか手伝う」
気づけば、詩織の元へ歩き出していた。
「すげぇ……」
「簡単なものだけど」
ほどなくして料理がテーブルに並ぶ。ご飯に味噌汁、肉じゃがと生姜焼き。豪華なメニューではない。それでも樹にとっては特別なものだった。
「いただきます」
手を合わせ、口に運ぶ。
「うっま」
「よかった」
少し不安そうに見守っていた詩織が安堵の笑みを見せた。食事を終え、二人で後片付けをして、寄り添ってテレビを見る。気づけば20時を回っていた。
「……そろそろ帰んなきゃかな」
詩織は黙って樹を見る。
「……そんな顔しないで」
樹は困ったように笑うと詩織の頭を撫でた。徐に立ちあがると、玄関に向かう。その後ろを詩織はゆっくり着いていく。
「今日はありがとう。久しぶりに詩織の手料理食べられて嬉しかった。」
振り返った樹はそう言う。
「じゃあ、」
そう言った樹のシャツの裾を詩織は咄嗟に掴んだ。
「……詩織?」
「……帰らないで」
小さく零す。
「……もっと、一緒にいたい」
そっと樹を見上げた。その瞳に樹は息をのむ。
(分かって言ってんのか……)
離せなくなる。絶対に。これ以上に一緒に居たら明日も仕事なのに、離れたくなくなる。だからまだ、今なら間に合う。そう思って帰ろうとしたのに。
思うより早く樹は詩織の手を掴む。
「俺だって、まだ一緒にいたい」
「……泊まっていけば」
「……どうなっても知らないよ」
困ったように笑う樹に詩織は握った手をそっと引き寄せた。
「もうこんな時間か」
腕時計を確認した樹が零す。
「送るよ」
ぽん、と詩織の頭を撫でて言った。エンジンをかける樹の手を詩織が掴む。
「詩織?」
「……ごはん、一緒に食べよう」
「いいよ。何食べる?」
「……私が作る。」
詩織の言葉に樹が目を丸くする。
「樹が食べたいもの、私が作りたい」
まっすぐ言う詩織に樹は少しだけ口元を緩めた。
「……それは楽しみだ」
そう言ってエンジンをかけ、車を発進させた。
途中でスーパーに寄り、夕飯の買い出しを済ませ、パーキングに車を停めると二人で詩織のマンションへ向かう。
「持つよ」
「重いもの、持たせるわけないでしょ」
そんな他愛もない会話をしながら詩織の部屋の前に立つ。
「あまり綺麗じゃないけど、どうぞ」
詩織は少し照れくさそうにそう言ってドアを開け、樹を中へ促した。
「……お邪魔します」
少し緊張した面持ちで、樹は買い物袋をダイニングテーブルに置く。
「すぐ作っちゃうから、座って待ってて」
詩織は自分の荷物を奥の部屋に置きに行った。戻ってきた詩織はエプロンを身につけ、髪をまとめながらキッチンに立つ。
(かわいい……)
キッチンに立つ詩織の初めて見る姿に、樹は思わず見惚れる。
けれど、どうにも落ち着かない。
促されるままソファに腰を下ろしたものの、初めて入った詩織の部屋が気になって、自然と視線が部屋の中を巡る。
(ここが詩織の家か)
マンションまで送ることは今までもあった。けれど、その先に入ったことは一度もない。
そんな場所に今、自分がいる。
ふと、チェストの上に目が留まった。
「これ……」
そこに置かれていたのは、一緒に映画を見た帰り道、立ち寄ったゲームセンターで取ったイルカのぬいぐるみだった。その隣にはプラネタリウムを一緒に見た日に贈った砂時計。
「……ちゃんと飾ってくれてんだ」
思わず立ち上がり、二つに近づく。
胸の奥がじんわりと温かくなった。
振り返れば、キッチンに立つ詩織を見れば楽しそうに料理をしている。
その横顔を見つめているうちに、自然と口元が緩んだ。
「——ねぇ、なんか手伝う」
気づけば、詩織の元へ歩き出していた。
「すげぇ……」
「簡単なものだけど」
ほどなくして料理がテーブルに並ぶ。ご飯に味噌汁、肉じゃがと生姜焼き。豪華なメニューではない。それでも樹にとっては特別なものだった。
「いただきます」
手を合わせ、口に運ぶ。
「うっま」
「よかった」
少し不安そうに見守っていた詩織が安堵の笑みを見せた。食事を終え、二人で後片付けをして、寄り添ってテレビを見る。気づけば20時を回っていた。
「……そろそろ帰んなきゃかな」
詩織は黙って樹を見る。
「……そんな顔しないで」
樹は困ったように笑うと詩織の頭を撫でた。徐に立ちあがると、玄関に向かう。その後ろを詩織はゆっくり着いていく。
「今日はありがとう。久しぶりに詩織の手料理食べられて嬉しかった。」
振り返った樹はそう言う。
「じゃあ、」
そう言った樹のシャツの裾を詩織は咄嗟に掴んだ。
「……詩織?」
「……帰らないで」
小さく零す。
「……もっと、一緒にいたい」
そっと樹を見上げた。その瞳に樹は息をのむ。
(分かって言ってんのか……)
離せなくなる。絶対に。これ以上に一緒に居たら明日も仕事なのに、離れたくなくなる。だからまだ、今なら間に合う。そう思って帰ろうとしたのに。
思うより早く樹は詩織の手を掴む。
「俺だって、まだ一緒にいたい」
「……泊まっていけば」
「……どうなっても知らないよ」
困ったように笑う樹に詩織は握った手をそっと引き寄せた。
