水族館を出た二人はさらに車を走らせた。行き先を樹は告げない。二人の会話は途切れない。離れていた時間を埋めるように、言葉を交わす。
やがて車はいつか二人で来た海へたどり着く。
「今度は海?」
詩織が問いかけても樹は笑うだけ。運転席を降りた樹は助手席に回る。
「自分で降りられるよ」
「俺がしたいだけだから」
くすくす笑いながら詩織は樹の手を取る。樹も笑顔で手を引いて砂浜の階段に座って二人は海を見つめる。先に口を開いたのは樹だった。
「……あの飲み会の時、入ってきた詩織に俺、固まったんだよね」
詩織は黙って樹の言葉に耳を傾ける。
「会えて嬉しいのに、初めましてって挨拶されて、正直焦った」
「……ごめんね」
詩織の言葉に樹は軽く首を横に振る。
「最初は気付いてないのかなとか、わざとかなとか、めっちゃ考えた。でも、まじで忘れてるって聞かされて」
波の音だけが二人の間に響く。
「そしたら仕事でまた会って。忘れろっていうほうが無理じゃん」
詩織がぎゅっと樹のシャツを掴む。その手に樹は自分の手を重ねる。
「だからさ、一回は最高の相棒になろうって思ったんだ。」
「けど、詩織と一緒にイベント作っていくうちに、どんどん好きになっていく自分がいた。」
樹は続ける。
「大学の時、あんな風に傷つけた俺が隣にいる資格ないって思うのに、詩織の隣にいたくてたまらなかった」
詩織がそっと樹を見上げる。樹はただ海を見ている。
「思い出せなくても、それでいいって。でも、だんだん詩織が俺を見てくれてる気がしてこのままでいいのかって。このまま隣にいたら、きっと俺は離れられなくなる」
一瞬、詩織を見る。
「そんな時に海外支社の話をもらって、アメリカへ行くことを決めた」
樹は小さく笑った。
「逃げ、もあったと思う」
樹は海から詩織へ視線を移す。
「まさか、思い出すなんて思わなかったよ」
「……私もね」
詩織も話し始める。
「最初はチャラいなって思ってた」
「おい」
「でも樹が仕事に向き合う姿見てたらどんどん目が離せなくなっていって」
「白石さんの声でって選んでくれたの、嬉しかった。」
今度は樹が黙って耳を傾ける。
「ずっと、懐かしいなって思ってた。なんでか分からないけど、樹の隣が安心できてここにいたいっていつの間にか思ってた」
「アメリカに行くって聞いて、行かないでって思った」
一瞬、詩織が樹を見ると目が合った。詩織は樹の肩に寄りかかる。
「そしたらね、全部思い出せた」
詩織は樹の手を握った。
「……樹って呼んでくれんだ」
「……樹は樹じゃん」
「そうだけど、高校の時は絶対呼んでくれなかった」
樹は嬉しそうに詩織の手を握り返す。
「名前を呼べることが、嬉しいんだ」
詩織はそう言って微笑む。予想外の答えに樹は驚いて目を丸くする。
「……嫌なら、やめるよ?」
「やめないでよ」
いたずらっぽく笑う詩織を樹は思わず抱きしめる。樹の腕の中で詩織が声をあげて笑う。
腕の中で笑う詩織がたまらなく愛しかった。詩織も笑みを浮かべたまま樹を見上げる。二人の視線が絡む。
「……好きだ」
「私も、樹が好き」
樹の手が詩織の頬に添えられ、二人の距離が近づいていく。二人の唇が重なった。
二人の距離が少し離れる。額を合わせて笑い合う。少し沈みにかけた夕日が水平線の向こうから二人を照らしていた。
やがて車はいつか二人で来た海へたどり着く。
「今度は海?」
詩織が問いかけても樹は笑うだけ。運転席を降りた樹は助手席に回る。
「自分で降りられるよ」
「俺がしたいだけだから」
くすくす笑いながら詩織は樹の手を取る。樹も笑顔で手を引いて砂浜の階段に座って二人は海を見つめる。先に口を開いたのは樹だった。
「……あの飲み会の時、入ってきた詩織に俺、固まったんだよね」
詩織は黙って樹の言葉に耳を傾ける。
「会えて嬉しいのに、初めましてって挨拶されて、正直焦った」
「……ごめんね」
詩織の言葉に樹は軽く首を横に振る。
「最初は気付いてないのかなとか、わざとかなとか、めっちゃ考えた。でも、まじで忘れてるって聞かされて」
波の音だけが二人の間に響く。
「そしたら仕事でまた会って。忘れろっていうほうが無理じゃん」
詩織がぎゅっと樹のシャツを掴む。その手に樹は自分の手を重ねる。
「だからさ、一回は最高の相棒になろうって思ったんだ。」
「けど、詩織と一緒にイベント作っていくうちに、どんどん好きになっていく自分がいた。」
樹は続ける。
「大学の時、あんな風に傷つけた俺が隣にいる資格ないって思うのに、詩織の隣にいたくてたまらなかった」
詩織がそっと樹を見上げる。樹はただ海を見ている。
「思い出せなくても、それでいいって。でも、だんだん詩織が俺を見てくれてる気がしてこのままでいいのかって。このまま隣にいたら、きっと俺は離れられなくなる」
一瞬、詩織を見る。
「そんな時に海外支社の話をもらって、アメリカへ行くことを決めた」
樹は小さく笑った。
「逃げ、もあったと思う」
樹は海から詩織へ視線を移す。
「まさか、思い出すなんて思わなかったよ」
「……私もね」
詩織も話し始める。
「最初はチャラいなって思ってた」
「おい」
「でも樹が仕事に向き合う姿見てたらどんどん目が離せなくなっていって」
「白石さんの声でって選んでくれたの、嬉しかった。」
今度は樹が黙って耳を傾ける。
「ずっと、懐かしいなって思ってた。なんでか分からないけど、樹の隣が安心できてここにいたいっていつの間にか思ってた」
「アメリカに行くって聞いて、行かないでって思った」
一瞬、詩織が樹を見ると目が合った。詩織は樹の肩に寄りかかる。
「そしたらね、全部思い出せた」
詩織は樹の手を握った。
「……樹って呼んでくれんだ」
「……樹は樹じゃん」
「そうだけど、高校の時は絶対呼んでくれなかった」
樹は嬉しそうに詩織の手を握り返す。
「名前を呼べることが、嬉しいんだ」
詩織はそう言って微笑む。予想外の答えに樹は驚いて目を丸くする。
「……嫌なら、やめるよ?」
「やめないでよ」
いたずらっぽく笑う詩織を樹は思わず抱きしめる。樹の腕の中で詩織が声をあげて笑う。
腕の中で笑う詩織がたまらなく愛しかった。詩織も笑みを浮かべたまま樹を見上げる。二人の視線が絡む。
「……好きだ」
「私も、樹が好き」
樹の手が詩織の頬に添えられ、二人の距離が近づいていく。二人の唇が重なった。
二人の距離が少し離れる。額を合わせて笑い合う。少し沈みにかけた夕日が水平線の向こうから二人を照らしていた。
