君の声

 ◇

「あの、白石さん!」
 会社を出たところで詩織は声をかけられる。振り返ると同じ会社の後輩が少し緊張した面持ちで立っていた。
「どうしたの?」
「……僕ずっと前から白石さんが好きでした!付き合ってください!」
 勢いよく手を差し出し頭を下げる彼に詩織は目を丸くした。道行く人が振り返っていく。詩織は少し困ったように笑って彼に頭を下げた。
「ごめんなさい。私、待ってる人がいるの」
「でも、その人海外にいるんですよね?もう帰ってこないんじゃ……」
「待ってるって約束したから。それに、私には彼しかいないの。」
 詩織がそう言って微笑めば後輩はそそくさとその場を立ち去った。足早に走っていく背中を見つめ、詩織は小さく息をつく。
「——俺しかいないんだ?」