君の声

「そろそろ行くか」
 時間を確認した京平の言葉に、三人は車へ乗り込んだ。
「休みの日なのに、悪いな」
「何水くさいこと言ってんだ」
「樹の門出、見送らないでどうする」
 二人の言葉に樹は黙り込む。
「泣くなよ」
「……泣くかよ、バーカ」
 身を乗り出した拓馬を樹は軽く押し返した。
 空港に向かう車内は賑やかだった。しんみりする訳でもない。変に励ましたりする訳でもない。出会ったときから変わらない、いつも通りの三人の空気がそこにはあった。
「そう言えば、お前綾ちゃんとどうなったの?」
 樹が振り返って後部座席の拓馬に問いかけた。
「は?」
 拓馬は目を丸くして樹を見る。
「ずっと好きだったじゃん。連絡取ってんだろ?」
「お前、なんで知ってんだよ……」
「さぁ、なんでだろうな」
 樹はからかうように笑う。拓馬は額に手を当て項垂れる。
「俺が帰ってくるまでに決めとけよ」
「樹は、もういいのか?」
 京平が一瞬だけ、樹を見た。
「——けじめはつけてきた」
「ならいい。」
 京平の言葉に樹は短く答える。
「そういや京平の話は聞かないな」
「確かに。」
「……俺のことはほっとけ」
 少しぶっきらぼうに答えた京平に、思わず二人は顔を見合わせて笑う。
 すぐそこには空港が見えていた。