キスから始まる恋は甘くて苦い

 けれど、彼女が現れてから蒼一はまた変わってしまった。
 鋭さと近寄りがたい雰囲気がなくなって……本来の彼が戻ってきたのだと感じた。

 それは相手があたしじゃないから。

 ただ救いたいと思ってるわけじゃないから。

「あの子、入部しないんだって? 残念だったね」

 少し前に言ってみたことがある。
 本格的にフラれたんじゃないかって、反応を確かめたかったから。

「そうだな」

 なのに、返ってきたのは穏やかな笑顔だった。

「まさか、付き合うことになったの?」

 そんな表情を向けるということはそういうことなのだと思った。

「なってねえよ。真野に報告する義務もねえし」

 だけど、蒼一は不愉快そうに口元を歪めてしまった。

「……へえ。相手にされてないってこと? 本命は麻生くんとか」

 どうしてこう、憎まれ口を叩いちゃうかな……

 怒らせたいわけじゃない。険悪さで気を引くことに慣れてしまって他の方法を忘れてしまった。

「想像すんのはまあ、勝手にしろって感じ」

 (とが)めたそうな目を向けながらも蒼一は軽く受け流した。
 昔は思ったことをさらっと口にするタイプだったけれど、いつのまにか感情をコントロールして本心を隠すようになったらしい。

「……本気なの?」

 どうか、気まぐれだと言ってほしい。
 ただのなりゆきで、遊びのようなものだって。