キスから始まる恋は甘くて苦い

 ガラス張りの窓は店内の様子を包み隠さず教えてくれる。蒼一はカウンター席に座っていてこちら側を向いていた。
 そして、目の前にコーヒーカップを置いたほたるを振り返り、笑い掛ける。
 それは、とても優しい横顔だった。

 やっぱり、見るんじゃなかった。

 それでも、なぜか目が離せない。
 やり切れない眼差しで見つめていると蒼一が急にこちらへ振り返った。
 急いで身を引き、壁に背中を押しつける。でも、気になって再び店をのぞく。
 蒼一はもう、こちらを見てはいなかった。

 そんなにあの子がいいの?

 確かに可愛らしいけれど、地味で目立たない普通の子にしか見えない。例えるなら、メインの花を引き立てる白いかすみ草のような……。
 でも、アレンジ次第で化ける花だから。
 そのときは、きっと主役を超える。
 蒼一にとっては、そんな魔法のような花なのかもしれない。

 あの子と関わってから、蒼はすっかり毒気がなくなった。

 以前は博愛主義なところがあったけれど、自分と別れてからは考えを改めたのだと思う。

 あたしなんかに(ほだ)されて、疲れて。

 優しい性格は変わらなくても人を見るようにはなったということだろう。
 だけど、誰にでも優しかったころよりなぜか彼の人気は上がった。

 そうしたのはあたしだって、蒼を見るたびに安心してた。