キスから始まる恋は甘くて苦い

「私たちも仲良く見えてるといいな」
「えっ?」

 心の中で思ったことを口に出してしまったことに気づき、ほたるはすぐに首を振った。

「いえ、何言ってるんでしょうね……」
「……俺は、仲良いと思ってるよ」

 思いもよらない発言に、折れかかっていた自尊心が息を吹き返して蒼一は浮かれた。

「今のは忘れてください」

 ほたるは対照的に、自分の言葉もそれを肯定されたことも恥ずかしくて鞄で顔を隠した。

「いや、それは無理かな」

 鞄を奪い取り、歩き出す蒼一。

「か、返してください」

 シャツ越しにもわかる、たくましい背中が目に飛び込んできて。追いかけようとしてもほたるの足はとっさに動かなかった。
 だけど、足が速い上に長いせいでどんどん遠ざかってしまう。

 待って、行かないで!

 ほたるは慌てて歩き出し、すぐに駆け足になった。

「置いてかないでください」
「ごめんごめん。ちょっと悪ノリした」

 シャツを掴まれた蒼一が振り向いて笑ってみせる。すると、うらめしそうな目を向けられた。

「ひとりにしないでください」

 甘えるようなそぶりは今までにない反応で……蒼一はドキリとした。

「じゃあ、離れんなよ」

 手をつなぐと、ほたるは安心したようにぎゅっと握り返してきた。

 離れたくない――

 同じことを思っているけれど口に出せないふたりは……甘く痛む心を隠しながら、静かに夜の街を歩いた。