キスから始まる恋は甘くて苦い

「お待たせしました」

 店の裏口から出てきたほたるは当然のように蒼一の元へ駆け寄った。

「お疲れ」

 蒼一はいつもそうしているのか、彼女の髪を優しく撫でている。完全にふたりの世界だ。

 バカらし……

 省吾は桂の右手を取り、ぎゅっと握りしめた。

「な、なに?」
「いいから。邪魔者は帰るぞ」

 聞こえよがしに言い放つと、省吾は蒼一に向かってチラッと舌を出した。

「健闘を祈りますよ」
「なんのだよ……」

 何かと突っかかってくる後輩にため息を吐きながらも蒼一は薄く笑んだ。

「桂ちゃん、渡くん。今日は来てくれてありがとう」
「うん。また明日ね」
「じゃーな」

 メイン通路へ歩いていくふたりを見つめ、ほたるがポツリとこぼす。

「桂ちゃんたち、仲が良いですね」

 蒼一は少し考えて「そうだな」と答えた。素直になれない省吾を思うとなんだか微笑ましくなる。

「桂ちゃんは明るくていい子だな」

 そして、何気なく言ったあとにハッとしてほたるを見やった。

「はい、そうなんです」
「…………」

 あまりに自信たっぷりに答えるから蒼一は言葉に詰まった。
 友達を褒めたことでヤキモチを妬いたりしないか……なんて期待するんじゃなかった。