キスから始まる恋は甘くて苦い

「桂!」

 親友のことを考えていたら省吾に肩を叩かれて我に返った。

「え、何? 急に大声出して」
「いや、なんでもない」

 びっくりして振り向いたけれど、省吾はそっけない態度でそっぽを向いてしまった。

「な、なんなの?」

 怪訝そうに見つめてくる桂から視線を逸らし、省吾は蒼一の横顔を見上げた。

 マジでムカつく。

 ただ黙って立っているだけなのに様になるし目立つし……さっきから道行く人々がこっちを見てくる。
 何より、桂が蒼一に見惚れていたことが一番おもしろくなかった。

 文武両道、容姿端麗って……無双すぎ。

 唯一の隙があるとするなら永瀬だろう。

 彼女にはデレるんだよな。

 大切で仕方ないことが嫌でも伝わってきてこっちまで恥ずかしくなる。

 でも、どんなにあからさまでも本人に伝わらなかったら意味がない。いくらモテても肝心な人に振り向いてもらえないつらさは、省吾もよくわかっている。

 イケメンも大変だな……
 
 店に入る前に「真野先輩」を見かけていた省吾は気の毒そうに口元を歪めた。
 どう見ても尾行しているようだったから見なかったことにしたけれど。