キスから始まる恋は甘くて苦い

 永瀬まひるは、努力家で我慢強い性格らしい。
 ケンカをすると折れるのはいつも姉の方だったと、ほたるが話してくれた。
 だから、知らず知らずのうちに傷つけていたのかもしれない――とも。

『こんなことになってやっと気がつくなんて、最低ですよね』

 そうやって自分の前で弱音を吐き出してくれて蒼一は正直嬉しかった。
 おそらく雅也には見せない顔だし、頼られているという実感がある。
 
 でも……麻生はすげえな。

 彼の心中を想像すると同情を超えて尊敬の念すら覚える。
 
 もし、ほたるが目を覚まさなかったら?

 自分の身に置き換えて考えみると、鳥肌が立った。

 まるで眠り姫だな……

 記憶の中の永瀬まひるは聡明な美人だ。凛としていて人望があり、思い返せば彼女に憧れている同級生は多かった。
 そんな彼女を射止めた雅也の、見る目が変わったと言えばそうなのだろう。

 劣等感だったのかもしれない。

 苦手意識があったのは、素直にそれを認められなかっただけだ。
 男としての格を思い知らされたようで、眉間にシワを刻む。