キスから始まる恋は甘くて苦い

 学校内ですれ違うとき、蒼一は何食わぬ顔で人差し指を自分の唇へ当てる。
 内緒を意味しているのかキスを連想させたいのか……どちらにしても、その仕草にいつも恥ずかしくなってしまう。

 先輩って、時々イジワル……

 ほたるは困って、熱くなる頬を両手で押さえた。
 その背後では、振り返った蒼一が抑えきれずに口角を上げる。

 そのまま、俺のことだけ考えてくれたらいいのに。

 辛い思いをするのはもう終わりにしてあげたい。
 姉が目覚めない限り、心から笑うことは許されないのだろうか。
 
 そんなことはない――

 ほたるは自分を責めているけれど、だからといってそんな罰を受ける必要はないと蒼一は思っていた。
 事故は不可抗力であり、まひるの本心は誰にもわからないのだから。