キスから始まる恋は甘くて苦い

 街灯の光から逃れるように薄闇の空間へ手を引く。蒼一は今日も曲がり角の手前でほたるを抱きしめた。

「あのさ。がんばりすぎてねえか?」
「そんなことないですよ」
「手荒れが気になるなら、ゴム手袋すればいいじゃん?」
「素手じゃないと汚れが落ちたかよくわからないんです。これからはちゃんと手入れしますから、大丈夫ですよ」
「うーん……あんま信用できねえな」
「先輩って、案外心配性ですね?」

 蒼一は過保護なお兄さんみたいなことをたまに言う。

 なんだか保護者と子どもみたいで……女の子として見てくれてないのかな?

 雅也のことは本当にお兄さんのように思えるけれど、相手が蒼一だといつも複雑な気持ちになってしまう。
 でも、いたわってくれてるのにそれは贅沢だ。
 そう思い直し素直にお礼を言って。

「迎えに来てもらうのは大変ですから、先輩も無理はしないでくださいね」

 常々思っていたことを付け加えた。

「俺がしたくてしてんだから、別にいいだろ」

 すると、蒼一はふてくされたような口調で言葉を返してきた。

「……もしかして、迷惑?」
「そんなことないです。嬉しいです」
「そっか……」

 不安になってすぐに問いかけた蒼一は、ほたるの即答にホッとため息をつき抱擁を解いた。

 ――キス、される。

 それを感じた瞬間に唇が合わさり、別れを惜しむように目を閉じる。