キスから始まる恋は甘くて苦い

「ズルイってなんだよ」

 蒼一は無意識に、恋人へ向けるような眼差しをした。
 あまりに優しく目を細めるから、ほたるは息を呑んだ。

 ううん、勘違いしちゃだめ。

 そして、心の中で言い聞かせる。

 この穏やかな時間を壊したくないなら、余計なことは考えないようにしなきゃ。

 ……でも、先輩はどうなんだろう?

 同じように居心地の良さを感じてくれているのか、いまいちわからない。

 先輩は、すごく素敵な人で。

 どうして自分に構ってくれるのかは謎のまま。
 訊いてしまえばいいのかもしれないけれど、答えを知るのは怖い。

 だって、もし、なんとも思われてなかったら……平静でいられる自信はない。

 そんな風に、今の関係を変えたくないと思うことに特別な意味があることをほたるはまだ知らないでいる。