キスから始まる恋は甘くて苦い

「手、荒れてねえか?」

 バスを降りて手をつなぐとほたるの手がカサついていることに気づいた。

「みっ、見ないでください!」
「隠すなよ。一生懸命働いてる証拠じゃん」

 とっさに手を離したほたるの手を引き戻し、蒼一はしっかりと指を絡め直した。

「そんな……そんなふうに言うなんてズルイ」

 ほたるの頬がみるみる赤く染まっていく。

 先輩は私をよく見てくれて、認めてくれて。

 いつも優しい言葉をくれる。

 自分が姉を傷つけた過去を聞いても態度が変わることはなくて。嫌われるかもしれないと考えていたことを恥ずかしく思った。
 いや、むしろ……以前よりも言葉だけじゃなく体の距離も近くなり、違った意味で恥ずかしい。
 手をつないだり、抱きしめられたり、キスしたり。
 恋人同士じゃないのに、そういうことをする関係が続いて。ただの“先輩”じゃないという想いは日々募っていく。
 だから、意識しないでいることが難しくなってきている。