キスから始まる恋は甘くて苦い

 追い打ちをかけるようにほたるの耳元へ唇を寄せる。

「麻生とは名前で呼び合うのに?」
「そ、それは……」

 ほたるは言い訳を探して言葉につまった。
 ふれる唇が、冷えた耳に熱を与えて思考をまとまらせてくれない。

「まあ、自然にそうなるのを待つよ」

 蒼一はからかうのを止め、正面から真剣にほたるを見つめた。
 そんな目をされたら、期待に応えたくなってしまう……。

「……蒼一、先輩」

 うかがうように唇を動かしてみる。

「がんばった感がすごいな」
「えっ?」

 すると、蒼一の方へ引き寄せられた。

「まあ、及第点かな」

 彼は意味深に笑んだあと、唇をふさぐようにキスをしてきた。

『嬉しい』

 そう思ってしまう自分に驚く。

 私、今、期待してた……

 キスされること。

 その証拠に、無意識に目を閉じて自然と受け入れていた。

 先輩が私のことをどう思ってるか、わからないのに。
 
 だって「好き」って言われたわけじゃない。

 どういうつもりでしてくるのかなんて、わからない。
 それでも、私は嬉しいと思ってしまう。

 また……流されて、心地よさに身を委ねてしまうんだ。

「ほたる……」

 キスの合間に無意識に名を呼んでしまい、蒼一はハッとした。

 これで今日は終わりにしなきゃな……

 最後のキスに、心の中で唱える。

『好きだよ』

 キミを大事に想ってることが伝わるといい、そう願いながら。