キスから始まる恋は甘くて苦い

「話って、何?」

 陽が落ちて街が薄闇に沈むころ、蒼一が口火を切った。
 いつのまにか彼に寄りかかっていたほたるはハッとして居ずまいを正す。
 どこから話せばいいのか……頭の中で整理してはいたけれど、いざとなると迷ってしまう。

「入部の件、なんですけど」

 まず保留にしていた返事をしないと話は始まらず、ほたるは重い口を開いた。

「やっぱり、辞めます。ごめんなさい」

 誘ってもらえて嬉しかった分、断るのは心苦しかった。でも、ハッキリ言わないとすべてを話す覚悟も鈍りそうだった。

「そっか……残念、だな」

 薄々、そうじゃないかと思ってはいた。けれど、そうきっぱり言われてしまうと……結構へこむ。
 でも、うやむやな状態が続くよりはマシだ。そう言い聞かせる。

「剣道が嫌なわけじゃないんです。理由があって」

 蒼一の浮かない表情を見てほたるは慌てて言葉をつないだ。

「話が長くなってもいいですか?」
「ああ、いいよ」

 困ったように見上げてこられるとなんでも許してしまいたくなる。蒼一はほたるの手を握り直した。

「私には、3歳上の姉がいるんです」

 ポツリポツリと話をはじめたほたるに耳を傾ける。時々うなずくだけで蒼一は静かに話を聞いた。