キスから始まる恋は甘くて苦い

「そうだな」

 茜色に染まる空と、誰もいなくなった静かな公園。
 穏やかすぎて、ここだけ違う時間が流れているような感覚に陥る。
 いい雰囲気の中、蒼一はあえておにぎりを頬ばり出した。

「なんの具が一番好きですか?」

 それに気づいたほたるが、意図したとおり自然に話しかけてきた。
 なるべく気持ちをほぐしてあげたいという、蒼一の思いやりには気づいていないけれど。

「明太子。ほたるは?」
「私はたらこです」
「似たようなもんだな」

 他愛のない話に、ほたるの肩から力が抜けていく。

「ちょうど明太子なくてたらこ買ったんだけど、食べる?」

 けれど、食べかけのおにぎりを差し出されほたるは一瞬固まった。

「はい、いただきます」

 でも、断ったら失礼な気がして顔を寄せる。

「……!」
「っ……」

 一口かじった瞬間、ほたるの唇が蒼一に親指にふれ……ふたりは慌てて身を引いた。

「……ごちそうさまです」
「いや……ほたるはさっき買ったもん、食べねえの?」

 気まずいわけではなかったけれど、どこかぎこちなくなるふたり。

「食べます。いただきます」

 正直お腹はそれほど空いていないけれど、ほたるは間が持たなくてサンドイッチを食べ始めた。