キスから始まる恋は甘くて苦い

「もう来ないの?」
「えっ?」
「うちの部、入んないの?」

 省吾は、あれ以来やってこないほたるを不思議に思っていた。
 あからさまに可愛がられているのに、気づいていない様子が面白くもあった。

「まあ、入っても3年生は引退するしな」

 蒼一に気があるのか確かめたくなり鎌をかけてみる。

「ごめん、入らないことにしたの。やりたいことが見つかったから」
「へえ」

 意外な答えだったけれど、省吾は素直に感心した。

「ちょっと残念だな」

 入ってくれたら、それはそれでオモシロイことになっていたかもしれない。

「あっ、ごめんね? 見学しておいて」
「気に入らなきゃ辞めたっていいんだよ。見学はそのためのもんだろ?」

 省吾は可愛い顔立ちで荒めの言葉を使う。そのギャップからか1年生の間では結構ファンがいたりする。

「辰巳先輩には言った?」
「ううん、まだ」
「オレから伝えとく?」
「大丈夫、自分で言う」

 おそらく、こういう気遣いができることも人気のひとつなのだろう。

「ただいま。ミルクティー買ってきたよ」
「うるせーのが帰ってきた」
「今なんて!?」

 桂が帰ってくると途端ににぎやかになって、ほたるは人知れず顔をほころばせた。