キスから始まる恋は甘くて苦い

「うん……でも、私もできることはしたい」
「その気持ちだけで十分だよ」

 長女が事故に遭ってからふさぎこむことが多かった次女。
 まひるがあんなことになり、ほたるまで元気を失っていく姿を見ているのはつらかった。けれど、最近になって表情が明るさを取り戻しつつあることに朝子は気づいていた。
 きっと、新しい世界につながる良い出会いがあったのだろう。

 お母さん、そんなふうに思ってくれてたんだ……

 姉が昏睡状態になってから、親子でじっくり話をすることがなかった。
 父も母も日々の生活で疲れていたし、話しかけづらかった。けれど、それは自分の方だったのかもしれない。

 お姉のちゃんことだけを考えて、現実から目を背けていただけ。

 ただ嘆いて悲しむだけで自分は何もしていない。両親は自身ができることを精一杯やっているのに。

 お姉ちゃんも、きっとがんばってる。

 外へ出ると、細かい雨が降っていたので傘を手に取った。薄紫色の傘を広げとぼとぼと歩く。
 蒼一との日々を振り返ると、後ろ向きだった自分が恥ずかしいとさえ思った。

 できることでいい、とにかく前に進まなきゃ。