キスから始まる恋は甘くて苦い

「そう。キスしたい」

 熱を帯びた目で見つめられて身動きが取れなくなる。返事をできないでいると蒼一が顔を寄せてきた。

「イヤ?」

 拒絶の色がないか、ほたるのヒトミをのぞく。恥ずかしそうにまつ毛を伏せるけれど、逃げようとはしなかった。
 ほたるの左頬に右手を添え、唇を重ねてみる。緊張しているのか、彼女のそれは硬くなっていた。

「ちょっと、ごめん」

 一度離れ、メガネを抜き取る。

「力、抜いて」

 親指で唇をなぞり、再び、キス。
 緊張をとく魔法をかけた唇は驚くほどやわらかい。

 こんなに甘い時間を、俺は知らずに生きてきたのか……

 たとえ片想いでも、気持ちがこもったキスは蜜の味だ。

 離したくないと――心から想う。

 なんでこんなに好きになってしまったのか……頭がどうにかなりそうだ。
 重ねるだけのキスを何度も繰り返し、蒼一はようやく唇を離した。
 目を開けたほたるが足元をふらつかせて寄り掛かってくる。

「ごめん……」

 調子に乗りすぎたかもしれないと思いながらも、無抵抗な細い体を抱きしめた。

「先輩、私……」
「ん?」

 こちらを見上げるほたると目が合い、蒼一の胸が甘い痛みに支配される。

「はじめてキスしました」
「……そうだといいと思ってた」

 見下ろしてくる甘い眼差しが恥ずかしくて、ほたるは蒼一の抱擁に身を委ねた。