キスから始まる恋は甘くて苦い

 先輩にとって、私はどういう存在なんだろう?

 ほたるは自分の立ち位置を探っていた。

 友達じゃないし、仲間でもない。

 それとも、ただの後輩?

 こっそり、蒼一を見上げる。

 ……好きな人はいるのかな?

 街灯に照らされ、鼻筋の通った横顔が浮かび上がる。まっすぐに前を見据える目と、意志の強そうな少し吊り上った眉。

「先輩に彼女がいないなんて、不思議です」

 つい、思ったことを口にしていた。
 自分で言ったことにびっくりしたほたるが口元を両手で覆う。

「ごめんなさい! 失礼ですよね……」

 すぐに謝罪をしたけれど、気まずさに蒼一の方を見られない。

「あー……うん。ちょっと、どう受け取っていいかわかんねえな」

 案の定、蒼一の口調は困惑していた。
 もしかして遊び人と思われているのかもしれないと焦り出す。

「それって、どういう意味?」

 蒼一は暗がりで立ち止まり、真剣な声でほたるを呼び止めた。

「それはっ……いい意味です!」

 焦った様子のほたるが目の前に駆け寄ってくる。

「先輩は剣道が強くて、かっこよくて、優しくて、明るくて……」
「も、もういいよ! わかったから」

 褒め言葉を羅列され、さすがの蒼一もストップをかけた。昼間だったら赤面しているのがバレてしまっただろう。

「マジで、参ったな……」

 ほたるの頭に右手を乗せる。蒼一は丁寧に髪を撫でた。

「先輩?」
「キス、したい」

 形のいい唇がゆっくりと動く。

「え? キス?」

 ほたるは聞き間違えたのではないかと、確認するように繰り返した。