キスから始まる恋は甘くて苦い

 本当のことを知っても、変わらないでいてくれるかな?

 ほたるは答えあぐね、メガネのフレームを直す。

「……ちょっとした知り合いです」

 逡巡したあと、そう答えるのが精一杯だった。

「そっか。変なこと聞いてごめん」

 これ以上攻めると心を閉ざしかねない。
 蒼一は早々に質問を切り上げた。本当のことを言ってくれなかったことが正直ショックではあったけれど。
 なぜ「姉の恋人」と言わなかったのか……まさか好きなんじゃないかと不安がよぎる。
 否定の仕方が強かったのもその裏返しなのか。問い詰めたいけれど、それはできない。
 一方的な嫉妬心を押し付けて嫌われたくはなかったから。

「あの」

 しばらく黙っていたほたるが声を掛けてきた。

「ん?」
「先輩はいるんですか? その、付き合ってる人……」
「……いや、いないよ」

 まさかのブーメランが返ってきて、蒼一は努めて冷静に返答した。

「そうですか」

 その答えに、どこかホッとしている自分がいる。