キスから始まる恋は甘くて苦い

 乗り込んだバスは混んでいて、立ったまま何度も腕がふれあった。
 でも、お互いに気づかないフリをして車内では言葉を交わさないでいた。
 来たときとは違う路線なので、ほたるの自宅付近のバス停で降車する。
 にぎやかだった大通りを外れ、静寂に放り込まれたような住宅街を歩く。蒼一は沈黙に耐えられなくなって口を開いた。

「麻生とはさ、付き合ってんの?」

 唐突な質問だとわかっていても、裏表のない蒼一の性格上訊かずにはいられなかった。

「つ、付き合ってません!」

 そして、絵に描いたように慌てて否定してくれたので安堵のため息をもらす。
 もし答えがイエスだったら修羅場に足を踏み入れるところだった……。

「そっか。じゃあ、どういう関係なの?」
「……どうしてそんなことを聞くんですか?」
「え? まあ、なんで一緒にいたのかと思ってさ」

 ほたるが明らかに困った素振りを見せて、蒼一はとぼけてみせた。