キスから始まる恋は甘くて苦い

 夕方は晴れていたのに風が雲を運んできた。星の見えない夜空から腕時計へと視線を落とす。
 ほたるがちょくちょくメールを送っていることに蒼一は気づいていた。

「そろそろ帰らないとな」

 これ以上付き合わせるわけにはいかず、心とは裏腹なセリフを吐く。

「もう、そんな時間ですか」

 ほたるがどことなく名残惜しげな顔をしているように見えるのは、希望的観測なのかもしれない。

「俺の気晴らしに付き合ってくれてありがとな」
「気晴らし、ですか」

 並んでバスターミナルに向かいながら、一瞬会話を見失う。
 ただそれだけのことだったのかと、ほたるはどこか腑に落ちない。

 あのときは、もっと、切羽詰まったような感じがあったのに。

 でも、案外深い意味はなかったのかもしれない。