キスから始まる恋は甘くて苦い

「な、なにか飲み物でも頼みましょうか?」

 ちょこんと腰を下ろし、緊張を隠せない様子でメニュー画面を開くほたる。

「じゃあ、アイスコーヒー」
「了解です」

 オーダーのあと、立ち上がってマイクを取りに行って戻ってくる。そんな彼女の小動物のような姿を見ていると、ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られた。
 でも、そんなことを実行したら怖がらせるに決まっている。

「ほたるは何にした?」

 だから、今は距離を縮めたくて他愛のない話をする。

「ミルクティーです」

 なんだかイメージにぴったりな好みに蒼一の眼差しがやわらかくなった。
 雰囲気が気まずくならないよう、アップテンポの歌を選曲する。
 次第に慣れてきたのかほたるも歌うようになった。こんなことを言ったらすねてしまいそうだけれど、意外に歌は上手かった。

「声、キレイだね」

 お世辞じゃなく本心から出た言葉に、ほたるは顔を真っ赤にしながら「ありがとうございます」とうつむいた。それからは恥ずかしがってもう歌ってはくれなかった。