キスから始まる恋は甘くて苦い

 駅に着くころ、辺りは暗くなりはじめていた。

「西の方は、まだ少し明るいですね」
「そういえば、随分陽が伸びたな」

 これから夏に向けて夜が短くなっていく。

「急ごう、思ったより時間がない」

 実はもう午後7時を過ぎている。ほたるの手を引き、蒼一は目当てのビルの中へ入った。

「カラオケ……ですか」

 受付を済ませて個室に入るとほたるは首を傾げた。
 そういえば理由もわからないままついてきてしまったけれど……目的が意外で戸惑ってしまう。

「あんまり好きじゃなかった?」

 ソファに座った蒼一が端末をいじりはじめる。

「そんなことは……得意ではないですけど」

 歌がというよりも、狭い空間にふたりきりの状況はよくよく考えてみるとハードルが高い。

「ストレス発散になるぜ?」

 蒼一が隣のスペースをポンポン叩いている。ここに座れと言っているようだった。