キスから始まる恋は甘くて苦い

「……誰?」

 かすかに声が聞こえて辺りを見回す。真っ暗で何も見えず、首をひねる。

 私の他に誰もいないはずなのに……懐かしい笑い声が降り注ぐように聞こえてくるのはなぜだろう?

 もしかして、上から?

 恐る恐る頭上を仰ぐと光の点が見えた。

 そっか……私が見ようと思わなかっただけで、初めからそこにいたんだね?

 瞬間、辺りが真っ白になった。光の点は目を凝らさないと判別できないくらい淡くて儚い。

 まるで真昼に現れた蛍みたい……

 ゆらゆらと瞬くそれは、今掴まなければ逃げてしまう気がする。

 ふたりとも、こんな私を許してくれるかな?

 傷つけるのも、傷つくのも怖いけれど……ここに留まっているのは、もっと怖い。

「帰りたい」

 空に浮かぶ優しい光に向かい、私は勇気を出して両手を伸ばした――





                     了