キスから始まる恋は甘くて苦い

「あっ……ご、ごめんなさい!」

 ほたるが慌てて前のめりになると、蒼一はハッとしたように身を引いた。

「――いや、謝るのは……俺の方だ」

 拒絶されたことで我に返り、全身の血の気が引いて蒼一の顔が青ざめた。

「ごめん……」

 重い風が、汗ばむ体を通りすぎていく。すぐ外で降っているはずの雨音は、どこか遠くから聞こえてくるようだった

 俺は、ほたるを汚そうとしたのか?

 大事にしたいと思っているのに、反対のことをしようとした。
 
 最低だ――

 叫びだしたい衝動を必死に堪える。

「頭冷やしてくる」

 蒼一は立ち上がり、ふらふらと窓の方へ向かった。

「先輩……」

 とっさに拒否してしまったことを後悔し、ほたるは呆然とした。

 自分からしたことなのに、嫌がるなんて……

 でも、少しだけ怖かった。急に男を見せつけられて、まるで知らない人みたいで。

 ううん、そうじゃない。

 やっと好きだって気づいたのに……私に、心の準備ができてなかっただけ。

 蒼一の、正気に戻ったときの困惑した目が脳裏に焼き付いている。

 きっと、傷つけた――