だから俺にしなよ

「海那〜、ま・さ・か・の!光の家に泊まることになったんだ〜」

「本当に?よかったじゃん」

またか。

明里は口を開けばのろけ話。

ずっと聞いていると疲れてくる。

そして、胸の痛みが治まらない。

「それでね、昨日の帰り、光とキスしちゃったんだ…!」

「え、?」

キス…

もうそんなところまで。

私とは手をつなぐところまでしかやってなかったのに。

何で、明里ばっかり。

ズキンズキン

胸の痛みが、苦しみに変わる。

心のなかの黒い気持ちを悟られないように無理やり笑顔を作った。

「そ、そうなんだ〜、順調だね」

「えへへ」

だめだ。

溢れちゃう。

「ごめん、先行ってて。用事あるの忘れてた。」

「え?授業始まっちゃうよ?」

「大丈夫だよ」 

「分かった!気をつけてよね〜」 

堪えている涙が溢れないうちに走った。

「あっつ」

やっぱり、夏の屋上は暑い。

ここなら、誰も来ないと思ったけど…

暑すぎる。

一番涼しそうな、日陰に座ることにした。

「は、はは」

バカだなあ。

自分に呆れた笑いが漏れる。

まだ、好きなのに応援して。

何やってんだろ。

だけど、こうしてないと全て失っちゃう。

もうそうするしかない。

「ふっ、うう…」

悔しさと虚しさと切なさが混ざった涙が頬をつたる。

「お前やっぱ、バカだろ。」

この声って…

「な、んで、あんたが」

目の前に、立っていたのは、伊織海だった。

「走って行ったから、もしかして泣いてるかと思って」

「泣くわけないじゃん」

「涙目なのによく言うわ」

そう言ってバカにしたように鼻で笑う。

こいつは人を怒らせら天才なのか。

「辛いなら協力しなきゃいいじゃん」

「でも、」

「友達だから、応援しないとってか?」

まさに図星。

こいつは人を怒らせる天才でもあり、エスパーなのかもしれない。

「応援できないって言って離れていくやつは最初から友達じゃなかったってことよ」

「まあ、あんたの勝手だけど」

まさに俺様。

光、こんなやつと友達なの?

理解不可能。

「泣きたいなら泣けば?俺が抱きしめてやるよ?」

「誰があんたの胸に飛び込むかっ」

だけど、そう言った顔は優しかった。

「お前は、もっと自分を大切にしたほうがいい。いつも、他のやつ気にしてたらいつかぶっ壊れるぞ。」

「もう一度言うが、泣きたいなら泣け。それが今1番にできることだ。」

こいつは、人を怒らせる天才でもあり、エスパーでもあり、人を…

安心させる能力が見たいだ。

そのせいで、涙が止まらない。

「なんてっ、ふっう、優しくするのよっ」

「知らん」

「知らないって、うう…」

ぽすっ

体が温かいものに抱きしめられる。

どうやら、伊織海は私を抱きしめてるらしい。

だけど、嫌な感じはしなかった。

むしろ、安心した。

_キーンコーンカーンコーン

いつの間にか、授業が終わってしまった

「ごめん、ありがとう。」

「落ち着いた?」

「うん。」

「そ。」

ひたすら泣いたからかスッキリした気持ちになった。

ちょっと苛つくやつだけど、今日は少し嬉しい。

なんでだろう。

まだ、抱きしめられた背中にぬくもりを感じる。

「スマホ出せ。」

「え?」

「いいからスマホ出せ。」

「あっ、はい。」

伊織海は私のスマホをとる(奪う)と何か操作された。

「ん。」

「何したの?」

「連絡入れた。なんかあったら連絡して。すぐに行くから。」

「あ、ありがと」

「じゃ」

そう言うとその場を去っていった。

ドキドキ

この胸の高鳴りは何だろう。