だから俺にしなよ

_いつからだろうか、一緒に帰らなくなったのは

_いつからだろうか、二人でいる時間が少なくなったのは

_一緒にいるだけで幸せ

_そう、よくばりにならなくなったのはどうしてだろう



「ねぇ、今日帰れたりする?」

「ごめん。今日予定ある。」

「そっ、か。ごめんね?忙しいのに。」

「別に」

こんなに私に冷たかったっけ。

一緒に帰らなくなってからどれぐらい経ったけ。

「あと、みんなに見られると嫌だから、学校では話しかけないでもらえる?」

「え…」

「海那も嫌だろ?」

違う。

私が嫌なのは、光と離れることなんだよ。

気づいてよ。

彼女なんだから、我慢しなきゃ。

「うん。気をつけるね。」

鼻の奥がツンとする。

「ごめんね。じゃあまた。」

「ん。」

見られないように話を切り上げると逃げるようにその場を離れた。

急いで入ったのは駅前の小さなカフェだった。

「いらっしゃいませ、1名様ですね。こちらの席にお座りください。」

「あ、はい。」

私が顔を上げるとここの従業員なのか若い女の人がこっちを見ていた。

やばっ。

見られたかな?

何かを察したように笑う女の人は「気持ちが落ち着くまでゆっくりお過ごしください。」と言ってカウンターの方へ戻って行った。

「ふっ…」

座るのと同時に涙が溢れた。

いつまで、我慢すればいいのかな。

光とずっと一緒にいたいのに

「なんで、なんで離れるのっ…?」

私の彼氏、今井 光(イマイ コウ)は一年前から付き合い始めた。

付き合う前は幼馴染でいつも一緒にいた。

優しいところとか、明るいところに私はどんどん光に惹かれていった。

勢いで告白した時は嬉しかったな。

『俺も海那のこと、気になってた』

って言って抱きしめてくれた。

それから、半年くらい一緒に登下校したり、食べ歩きもした。

カラオケで歌いすぎて二人とも声が枯れてて爆笑したこともあったっけ。

だけど、光が部活に本気を出したころから二人でいる時間は半分以下になってしまった。

光は小さいころからサッカーをしていて人よりも少し上手かった。

中学に入ってから才能を発揮し、いつの間にかチームのエースになっていった。

それから

「部活が忙しいから。」

「顧問に呼ばれているから。」

「今日はオフだから休みたい。」

という理由で私の誘いを断るようになってしまった。

最近なんか、一ヶ月前に一緒に帰ったきり、一度も二人であってない。

別に私だけを優先してほしいってわけじゃない。

ただ、私との時間も作ってほしかっただけ。

「っ…」

色々考えているうちに涙がまた溢れてきた。

外から笑い声が聞こえる。

窓を見ると幸せそうに歩く男女二人がいた。

「え…」

その二人は

光と親友の明里だった。

「え、ちょっと、待って」

何度目を擦っても、何度目を凝らしても目に映るのは光と明里だった。

「予定ってこのことだったんだ。」

私はどうしたらいいの?

光は、光は

私じゃなかったんだね。

「う、ふっ…」

拭っても拭っても溢れ出る涙。

泣いて、泣いて、泣いて。

気づいたときには6時半を過ぎていた。

「すみません。コーヒーを一つ。」

「かしこまりました。」

少しすると注文したコーヒーが出てきた。

「苦い」

ミルクを入れ忘れたコーヒーは光を失った私のようだった。