ただの後輩だった、はずなのに。

「成瀬さんってどこの高校ですか?」

レジに立っていた私に、後ろから声が飛んできた。

振り向くと、そこに居たのは朝倉くん。
私より後に入ってきた高校一年生の男の子だ。

「東川原高校だよ〜」
「そうなんですか、何年生ですか?」
「2年生だよ、朝倉くんは?」
「1年生です」
「え、1年生?よく大人っぽいって言われない?笑」
「そーうですかね?笑」
「うん。大人っぽいよ笑」

その時お客さんが私のレジの方に来た。

「お願いしまーす。」
「いらっしゃいませー。」

お客さんの会計を終え、ふと後ろを見ると、朝倉くんはお客さん対応をしていた。

朝倉くんが入ってきて、一、二か月。
こうしてちゃんと話したのは、今日が初めてだった。

そんなことを考えていると、また後ろから声がした。

「成瀬さんって家どこら辺なんですか?」
「ここら辺ではあるよー、朝倉くんは?」
「僕もここら辺です」
「そうなんだ〜、ここのバイト生ここら辺が家の人多いよね笑」
「ですよね。笑」

それからしばらく、お互いにお客さんの対応をしていた。

忙しくなったり、落ち着いたり。
いつもと変わらないバイトの時間。

ただ今日は、お客さんが途切れるたびに朝倉くんと話していた。

学校のこと。
家のこと。
バイトのこと。

今までほとんど話したことがなかったのに、不思議と会話は途切れなかった。

レジの操作パネルに表示された時刻を見ると、もう20時を過ぎていた。

「朝倉くんは21時まで?」
「そうです。成瀬さんも?」
「そうそう〜」

そのときだった。

「次いつ出勤ですか?」
「次はー、木曜日だよ」

バイト先の人に出勤曜日を聞かれたのは、初めてだった。
朝倉くんって、コミュ力高いんだなぁ。

「僕4連勤なんです、、」
「えー、辛いね、がんばれ」
「ありがとうございます。笑」

それから21時になるまで、私たちはそれぞれお客さんの対応をしていた。

事務所に戻り、退勤ボタンを押した。
服を着替え、荷物を肩にかけた。

「お疲れ様でしたー。」

そう言うと、近くから「お疲れ様でした」と声が返ってきた。

今日だけで、朝倉くんとずいぶん話した気がする。

高校のこと。
家のこと。
バイトのこと。

今までほとんど話したことなんてなかったのに。

でも、このときの私はまだ知らなかった。

今日を境に、朝倉くんと話すことが当たり前になっていくことを。