問い合わせの要点を、付箋に書いて電話機の縁に貼っていく。
山吹色から始まったメモ書きは、昼前には、終盤の緑色まできてしまった。
労働組合の書記長からも電話が入った。
「近いうちに、正式に協議を申し入れます。窓口は倉橋さん?」
「部長になると思います。日程は調整のうえご連絡します」
「……大変だね」
また、私は言葉に詰まる。
本当に責めてくれたほうが楽なのに。
十四時過ぎに遅い昼を給湯室で立ったまま済ませていると、総務の真山千夏が入ってきた。
同期入社で、部署が違うが、いちばんよく喋る相手だ。
「このみ、生きてる?」
「かろうじて」
「ねえ、再建コンサルが入るって話、ほんと?」
「発表以上のことは知らない」
「人事なのに?」
「人事でも、知らないことはあるの。経営層はいろいろ知ってるんだろうけど」
千夏は肩をすくめて、インスタントコーヒーにお湯を注ぐ。
「二年前に北関東の電機メーカーをやった人が来るらしいよ。半年で三百人切ったって」
「誰から聞いたの」
「誰からだったかな。ただ、みんなそう言ってる」
誰が言い出したのかも分からない噂なのに、三百人という数字だけ、やけに生々しく聞こえる。
営業にいた頃は、切るといえば、名刺を切らすことだけだったけど、人事に来てからは人に対してばかりこの言葉を使っていて嫌になる。
短いお昼休みを済ませて席に戻ると、課長が受話器を置いて言った。
「十七時半に全体説明会するから。講堂の設営よろしく」
