私と海と電話

 終業式。


「明日から夏休み!」


 クラス中が喜んでいた。


 叶愛も嬉しかった。


 でも。


 ふと、想を見る。


「……」


 夏休みになったら、学校で会えなくなる。


 それが、少しだけ寂しい。


 帰り道。


「想」


「ん?」


「夏休みって、暇?」


「まあ」


「じゃあ……」


 叶愛は少し迷った。


「電話してもいい?」


「……電話?」


「うん」


「いいよ」


「本当?」


「ああ」


 叶愛は嬉しそうに笑った。


「じゃあ、絶対ね!」


「わかった」


 その夜。


 叶愛はスマホを握ったまま、何度も時間を確認していた。


 午後九時。


 まだ早い。


 九時半。


 まだ。


 九時五十五分。


 スマホが鳴った。


『もしもし』


「……もしもし」


『電話していいって言ったのに、かけてこないから』


「かけるの恥ずかしかった」


『なんで』


「……なんとなく」


 想が笑った。


『変なの』


「想だって緊張してるでしょ」


『してない』


「嘘」


『……少し』


「やっぱり!」


 二人は笑った。


 それから一時間。


 二時間。


 気づけば日付が変わりそうになっていた。


『そろそろ寝る?』


「うん」


『おやすみ』


「おやすみ、想」


 電話を切ったあと。


 叶愛は枕に顔を埋めた。


「……楽しかった」