私と海と電話

放課後。


 教室に残っているのは二人だけだった。


「ここ」


 想が叶愛のノートを指差す。


「この公式使う」


「……なるほど」


「わかった?」


「うん!」


「じゃあ次」


「えっ、もう?」


「テスト来週だぞ」


「忘れてた」


「だと思った」


「想、先生みたい」


「褒めてる?」 


「たぶん」


「たぶんかよ」


 二人で笑う。


 窓の外から、運動部の声が聞こえてくる。


「そろそろ帰る?」


「うん」


 校門まで一緒に歩く。


「じゃあ、また明日」


「また明日」


 そこで別れる。


 たったそれだけ。


 でも叶愛は、家に帰る途中で思った。


 ――明日も学校で会える。


 それが、なんとなく嬉しかった。