私と海と電話

「えーっと……」


 如月叶愛は、黒板に貼られた座席表をじっと見つめていた。


 四月。


 中学二年生になって、最初の席替え。


「私の席……」


 自分の名前を見つける。


「窓側だ!」


 叶愛は小さくガッツポーズをした。


 その隣の席には――


「矢倉 想」


「……俺?」


 後ろから声がした。


「え?」


 振り返ると、想が座席表を見ていた。


「隣じゃん!」


「そうだな」


「よろしく!」


「よろしく」


 想はいつも通り、少し素っ気ない。


「ねえ、想」


「何?」


「今年、同じクラスでよかったね」


「……うん」


「今ちょっと嬉しそうだった!」


「気のせい」


「絶対そう!」


「うるさい」


 叶愛は笑った。


 想も、ほんの少しだけ口元を緩めた。


 このときはまだ。


 この一年が、こんなにも大切な一年になるなんて。


 二人とも知らなかった。