高嶺の王子様が幼なじみだった話。

 「茜くん、今日もお休みかなぁ」
 紫音との再会から数十分後、もうほとんどの生徒が登校していて、まだ来ていないのは数人だった。
 茜くんも、そのうちの1人だった。
 「茜なら心配ないと思うよ」
 会えるか不安になる私に、翠くんは励ましの言葉をくれる。
 「大丈夫よ、普。茜は、いつも遅刻ギリギリだもの」
 「そうなの・・・?」
 そう聞くと、2人は顔を見合わせて苦笑いした。
 いつも遅刻ギリギリなら、もうすぐ来るかな。
 時計は、8時15分を指していた。
 HRは8時20分だから、遅刻ギリギリならあと数分で来るだろうか。
 そう思ったとき、「おはようございまーす」という声が教室に響いた。
 茜くんだ・・・。
 すぐに分かった。茜くんの声は、印象に残っているから・・・。
 何か落ち込んだことがあったとき、茜くんの声を聞くと元気が出た。よく通って、明るく優しい声。
 もう一度、その声をまた聞けたことが嬉しくて口元が緩んでしまう。
 「茜くん!」
 自分の席に向かおうとしていた茜くんを呼び止める。
 「・・・っ」
 茜くんは、すぐに振り返ってくれた。
 「あ、まね・・・?」
 茜くんは、ここに私がいるのが信じられないという顔でこちらを見てくる。さっきの紫音と同じ顔だった。
 まぁ、そんな簡単に信じられないよね・・・。昔、遠くに引っ越した幼なじみが自分の教室にいるなんて・・・。
 私も最初は信じられなかったから・・・。
 「あの、久しぶり」
 そう言うと、茜くんは急に泣き始めた。
 「あまねぇ・・・」
 顔をくしゃくしゃにして、抱きついてきた。
 「えっ・・・」
 突然のことに戸惑っていると、「会いたかった。ずっと・・・」と、茜くんが呟いた。 
 「私も、会いたかったよ・・・」
 そう伝えると、茜くんは嬉しそうに「えへへ」と笑ってくれた。それだけで、私とどれだけ会いたかったか伝わってきて嬉しかった。
 しばらく抱き合っていると、「感動の再会中ごめんね」と翠くんの手が伸びてきて、茜くんを私から剥がしてしまった。
 「翠、何するんだよ!」
 茜くんは、翠くんに向かって怒っている。
 「何も。ただくっつきすぎだと思っただけ」
 なんだか既視感・・・。
 「2人とも、やめなさいよ・・・」
 言い合う2人を紫音がなだめている。
 「ふふっ」
 なんだか、昔に戻ったみたい。
 
 周りの、冷ややかな視線に私は気づいていなかった。