悪女の耳飾り

「……そうかもな。」

クロは短く答えると、不意に華の頭へぽんと手を置いた。

大きな手が、黒髪をゆっくりと撫でる。

「……っ。」

華の肩がぴくりと震えた。

「……やめてよ。」

眉をひそめてクロを見上げる。

「気持ち悪い。何、急に。」

「別に。」

クロは何でもないことのように肩をすくめた。

「そこに頭があったから。」

「……何それ。」

華はじろりと睨むが、クロは意に介さない。

そのタイミングで、ジュウジュウと音を立てるステーキが運ばれてきた。

クロはフォークで肉を一切れ刺すと、そのまま華の口元へ差し出す。

「ほら。」

「……子どもじゃないんだけど。」

「いいから食え。」

クロはぶっきらぼうに続けた。

「そのままじゃ、生理まで止まるぞ。」

「……サイテー」

華は呆れたように笑う。

「それ、セクハラ。」

文句を言いながらも、差し出されたステーキにぱくりとかぶりついた。

噛むたびに肉汁が口いっぱいに広がる。

「……。」

「どうだ。」

クロが口角を少しだけ上げる。

「うまいか?」

華は少しだけ考える素振りを見せてから、小さく頷いた。

「……まぁまぁ。」

「素直じゃねぇな。」

クロはふっと笑った。

その笑顔につられるように、華もほんの少しだけ肩の力を抜く。

しばらくは、食器の触れ合う音だけが二人の間に流れていた。

やがてクロがフォークを置き、静かに口を開く。

「……なぁ、華。」

「なに。」

「もし、死にてぇって思う日が来るなら。」

華は顔を上げる。

クロは真っ直ぐ華を見据えた。

「一人で決めるな。」

「……。」

「その前に、俺んとこ来い。」

低い声で、続ける。

「お前が『死にたい』って言うなら、最後まで俺が付き合ってやる。」

「……。」

「だから、一人でどっか行くな。」

華はしばらく黙ってクロを見つめていた。

やがて、ふっと力の抜けたように笑う。

「……やっぱクロさんって。」

その笑みは、どこか柔らかかった。

「たまに変なこと言うよね。」