悪女の耳飾り

クロは華の言葉には答えず、店員を呼んだ。

自分にはビールを一杯。

華にはアルコールの入っていないドリンク。

それから、肉料理をいくつか注文する。

注文を終えると、メニューを閉じて華を見た。

「まずは食え。」

低い声で言う。

「話は、それからだ。」

「話ぃ?」

華はテーブルに頬を乗せたまま、気だるそうに笑った。

「話すことなんて、何もないよ。」

しばらく沈黙が流れる。

やがて華は、ふと思い出したように口を開いた。

「……クロさんってさ。」

「ん?」

「彼女いるの?」

「いねぇ。」

短い返事だった。

「ふーん。」

華は興味があるのかないのか分からない声を漏らす。

「でも、女遊びはしてたんでしょ?」

「……まぁな。」

クロはグラスの水を一口飲む。

「昔は。」

「今は?」

「落ち着いた。」

「あっそ。」

華はそれだけ言うと、また視線を宙へ向けた。

興味を失ったような、淡白な反応だった。

クロはそんな華を見つめる。

「……何でそんなこと聞く。」

華は少しだけ黙り込んだ。

そして、小さく笑う。

「別に。」

その笑みはどこか寂しかった。

「ただ……クロさんには、私の気持ちなんて分かんないだろうなって。」

「……。」

華はテーブルに頬をつけたまま、ぼんやりと一点を見つめる。

「失恋するたびに、自分に穴を開けるような私の気持ちなんて。」

ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「女に困ったことなんてなさそうなクロさんには、分かんないよ。」