悪女の耳飾り

クロは手際よくキャッチを留めると、ティッシュを一枚抜き取り、華へ放った。

「……ほら。」

「……あんがと。」

華はティッシュを受け取り、滲んだ涙を拭う。

それから立ち上がり、壁際の鏡へ向かった。

「……ん、かあいい。」

舌の痛みで呂律の回らない声。

鏡に向かって舌を少し突き出し、新しく増えたシルバーのピアスを眺める。

満足そうに、ふっと笑った。

その横顔を見つめながら、クロは黙って器具を片付け、使用したニードルを処分していく。

静かな時間が流れた。

「……お前さ。」

「ん?」

華は鏡越しに振り返る。

クロは少しだけ言葉を探すように口を閉ざし、それから低く問いかけた。

「……死にてぇの?」

その一言で、華の動きが止まる。

鏡に映る自分を見つめたまま、しばらく何も言わない。

やがて、ゆっくりとクロの方へ顔を向けた。

「……まぁね。」

いつものように、飄々と笑う。

その笑顔が、クロの神経を逆撫でした。

「『まぁね』じゃねぇだろ。」

思わず語気が強くなる。

「お前、自分が何言ってるか分かってんのか。」

華は肩をすくめると、カウンターへ財布を置いた。

「……で、いくら?」

「今日は左耳はいいや。舌ピだけで満足したし。」

「おい。」

クロは眉をひそめる。

「話、逸らすな。」