悪女の耳飾り

華はバスタオル姿のままソファーへ沈み込むと、ぼんやりと天井を見上げた。

(……疲れた。何もかも)

このまま二度と起き上がらなくて済むなら、どんなに楽だろう。

「……俺も風呂入ってくる。せめて俺のTシャツ着ろよ、目のやり場に困る」

そう吐き捨てて、クロは浴室へと向かった。

言われた通りバスタオルを解き、借りたダボついたTシャツに袖を通す。すっぽりと太ももまで隠れ、まるでワンピースのようだ。確かにバスタオル一枚よりは、いくらかマシだった。

「……はぁ」

ソファーに横たわり、奥から聞こえるシャワーの音に耳を澄ます。

好きな人と両想いになれたなら、どれだけ幸せだろう。そうであれば、こんな泥のように重い気持ちを抱えずに済んだはずだ。

好きでもない男の部屋に上がり込み、シャワーを借りて、無防備にソファーで転がる——そんな自堕落な真似だって、きっとしなかった。

(……あーあ。私、本当に恋愛向いてないな……)

華は抗うのをやめ、静かに目を閉じた。感情の重さに耐えかねた脳が、逃避するように深い眠りへと誘っていく。

――――――

「……ん、ぅ……」

どれほど眠っていたのか。肌を撫でる生暖かい感触と、遅れて押し寄せる甘い痺れに、華は強制的に目を覚まさせられた。

「……っ!?」

驚愕に目を見開く。暗闇に目が慣れるにつれ浮かび上がってきたのは、自分の胸に顔をうずめ、吸い付くクロの姿だった。

「クロさん……っ!? なに、して……っ」

「起きたか」

狼狽する華とは対照的に、クロの佇まいは静まり返っていた。咎める声すら意に介さず、ただ淡々と、作業のように華の胸を愛撫し続ける。

「やっ……待っ、て……、んぁっ……!」