悪女の耳飾り

クロの家は、繁華街から少し離れた古いアパートの一室だった。

細い路地を抜けた先にひっそりと建つ、築年数の古そうな二階建て。

外観だけ見れば、お世辞にも綺麗とは言えない。

「ここ。」

クロが鍵を開けて部屋へ入る。

華も後に続き、一歩足を踏み入れた。

「……へぇ。」

思わず声が漏れる。

外観とは対照的に、部屋の中は驚くほど整頓されていた。

黒と木目を基調にした落ち着いたインテリア。

壁には額装されたタトゥーデザインの原画や、海外のアートポスターが飾られ、棚には画集やデザイン集が綺麗に並んでいる。

作業机の上にはスケッチブックと色鉛筆が置かれ、生活感はありながらも、どこかギャラリーのような空気が漂っていた。

「……ふーん。」

華は部屋をぐるりと見回しながら口角を上げる。

「案外ちゃんとしてるんだね。」

「……何だ、その『案外』って。」

「だって、もっと散らかってると思ってた。」

華はソファの背にもたれながら肩をすくめた。

「これなら、いつでも女の子呼べそう。」

「……チッ。」

クロは小さく舌打ちする。

「お前はいちいち癪に障る言い方するな。」

「まぁね。」

華は悪びれる様子もなく笑う。

「癪に障るように言ってるし。」

そう言って、べっと舌を突き出した。

今日開けたばかりのシルバーの舌ピアスが、照明を受けて鈍く光る。

クロは呆れたようにため息をついた。

「……お前、先にシャワー浴びてこい。」

クローゼットを開け、黒いオーバーサイズのTシャツを一枚取り出す。

「着替えはこれ貸してやる。」

そう言って放ると、華は片手で受け止めた。

広げてみると、自分の身体がすっぽり収まりそうなほど大きい。

「……でか。」

肩を落として苦笑する。

「これじゃワンピースじゃん。」

「文句言うな。」

クロは冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しながら答えた。

「俺のサイズなんだから、それしかねぇ。」

「……はぁ。」

華は小さくため息をつく。

バッグをソファへ無造作に放り投げると、Tシャツを抱えて浴室へ向かっていった。