悪女の耳飾り

いつからだろう。

心が壊れ始めたのは。

最初は、ほんの些細な失恋だった。
好きになった人には、ただ好きな人がいた。
それだけのこと。

仕方がない。そう自分に言い聞かせて、笑って諦めてきた。

けれど、それが一度、二度、三度……何度も繰り返されるうちに、私の心は少しずつひび割れていった。

「好きです。」

そう伝えるたびに返ってくるのは、決まって同じ言葉。

『ごめん。好きな人がいるから。』

『彼女がいるから。』

その一言だけで、私の恋は終わる。

私は、誰にも選ばれなかった。

だから、ある日を境に壊れた。

好きな人を恨むことはできなかった。

その代わり、その人が好きになった女を憎むようになった。

陰口を叩いた。

机に傷をつけた。

鞄にゴミを入れたこともある。

最低だと思う。

でも、やめられなかった。

やがて噂は広がり、今度は私が陰口を叩かれる番になった。

「あの人、性格最悪らしいよ。」

「悪女なんだって。」

そう呼ばれるようになっても、もう何も感じなかった。

失恋するたびに、私はピアスを一つ増やす。

耳に穴を開ける痛みだけが、自分がまだここにいることを教えてくれるから。

その日も私は、行きつけのピアス&タトゥー専門店を訪れていた。

「クロさん。左耳、開けて。」

消毒液の匂いが漂う店内で、私がそう言うと、九朗鉄也――通称クロさんは、小さくため息をついた。

「……またか。」