夏の終わりの花火はきっと美しい

 「じゃあね、優ちゃん」
 僕はいつも通りの笑顔を意識して、優ちゃんのことを見送った。
 「うん、じゃあね」
 優ちゃんは一瞬、何かを我慢するような顔をしたあと笑顔になって僕に手を振り替えしてくれた。
 
 ベットに倒れ込んで、今日のことを思い出す。
 ポッケに入れてあったやりたいことリストを出して広げた。
 「・・・ふふっ」
 やりたいことリストを見ていると、なんだか温かい気持ちになった。これを達成する頃には、僕の余命はもう残ってないはずだから少し、悲しい気持ちにもなるけどね。
 それでも、このリストに書いてあることは僕と優ちゃんのこれをしようっていう約束みたいなものだから、嬉しくなってしまう。優ちゃんとの約束だから、絶対に守ろう。
 花火か・・・。
 きっと、綺麗なんだろうな。
 浴衣を着たり、屋台も出るはずだから美味しいものも食べられるのかな・・・。屋台の定番って何だろう・・・。
 お祭りにも行ったことがない僕は屋台の定番なんて分からないけど、花火大会で食べるご飯っていつもと違う感じがするのかな・・・。
 「早く・・・」
 行きたいという気持ちと、まだ来ないでほしいという気持ちで僕の心の中はぐちゃぐちゃだった。
 
 ーコンコン 
 「累・・・」
 ノックのあとに母さんの声がして体を起こすと、ドアの隙間から母さんが不安そうにこちらを見ていた。
 「どうしたの・・・?」
 余計な心配をかけないように穏やかな声を意識し、笑顔で返すと母さんは安心したような顔になって「大丈夫・・・?」僕にギリギリ聞こえるくらいの声で、問いかけてきた。
 「・・・うん、大丈夫だよ。心配、かけてごめんね」
 余命宣告をされたときと比べて、僕の心は落ち着いていた。それはきっと、ちゃんと余命を受け入れることが出来たからだろう。
 それと、優ちゃんと会ったから・・・。
 本当、優ちゃんは偉大だ・・・。
 僕は、優ちゃんが今どんな気持ちでいるかも知らずにそんなのんきなことを考えていた。