夏の終わりの花火はきっと美しい

 『少し、話したいことがあるんだ。今から会えない?』
 病院から帰ってすぐ、優ちゃんにメールを送った。もちろん、僕の余命について話すためだ。話さないことも考えたが、主治医の小林先生は精神的な支えはあった方がいいと言っていたし、僕は優ちゃんと付き合うと決めたとき、何かあったら必ず話すと約束した。
 ドキドキしながら返信を待っていると、すぐに『オッケーだよ!いつものあの公園でいいかな?』ときた。可愛いスタンプ付きで。
♢♢♢
 待ち合わせ場所の公園に着くと、優ちゃんはベンチに座って待っていた。まだ十分前なのに・・・。これ以上暑い中で待たせるわけにはいかない。そう思って急いで駆け寄ろうとしたとき、世界が回った。おもわずしゃがみこんでしまうと、こちらに気づいた優ちゃんが急いで来てくれる。
 「累くん大丈夫!?救急車呼ぼうか?」
 「ううん、大丈夫。少しめまいがしただけ」
 笑いかけると、安心したのか息を吐いて「大丈夫なら良かったけど・・・」と言った。そして、僕を立たせると持っていた水を差しだしてくれた。
 「今日は暑いから、水分補給は大事でしょ?」
 優ちゃんは優しい。めんどくさいことばかりの僕に愛想尽かさずに、心配して気を遣ってくれる。
 「ありがとう」
 水をありがたく受け取って、二人揃ってベンチに腰掛ける。話を切り出そうとしたら、優ちゃんから先に「話したいことって?」と聞いてくれた。
 「あぁ、うん。今日さ、定期検診に行ったんだけど・・・

 僕が話し終わるまで、優ちゃんはずっと黙って聞いてくれた。終わった後、その顔に何が浮かんでいるのか見るのが怖くてうつむいていると急に抱きしめられた。
 「え、あっ・・・」
 驚いて、優ちゃんの腕の中でバタバタしていると「ごめんごめん」と笑って離してくれた。でも、目尻に光るものがあるのを僕は見逃さなかった。
 「優ちゃん・・・」
 悲しませてしまった。やっぱり、話さない方が良かったかもしれない。そう思っていると、優ちゃんは口を開いた。
 「ねぇ、累くん。累くんはこれからどうしたい?」
 僕のしたいこと、それはもう決めている。
 「僕は、残された時間を使ってこの夏を満喫したい。今まで出来なかったことをやってみたいし、行けなかったところにも行ってみたい。優ちゃんと・・・」
 そう言って、優ちゃんの目をまっすぐ見る。
 数秒の沈黙の後に、優ちゃんは笑って答えてくれた。
 「私も、累くんとこの夏を満喫したい!」
 優ちゃんと一緒なら、きっとこの夏は僕の人生の中で一番充実して幸せな時間になる。
 二人の間に温かい風が通り過ぎていった。