夏の終わりの花火はきっと美しい

 「ー以上の結果から、累くんの心臓は限界に近づいています。残念ですが、今年の冬を迎えるのは難しいでしょう」 
 主治医は淡々と残酷な事実を僕に突きつけてくる。絶望で視界がゆがみ、すべての音が遠ざかっていく。現実を受け入れたくなくて、ぎゅっと目をつぶる。暗闇の向こうに、「今年の夏はやりたいこと、沢山やろうね!」そういって笑ってくれた恋人の優ちゃんの顔が浮かんだ。
 (ここで、絶望してる場合じゃない)
 昔からずっと覚悟していたはずだ。いつかこんな日が来ると。だから、せめて悔いが残らないようにこの夏を過ごそう。そう決意した僕は、目を開く。母が、心配そうに目に涙をためてこちらを見てくる。
 「大丈夫、累?」
 「うん・・・」
 大丈夫なわけないけど、嘘をついた。そうしないと、心が折れそうな気がしたから。
 こうして、僕の最後の夏が始まった。
 窓の外には、雲一つ無い青空が広がっていた。