ライブが終われば、打ち上げがあって、スタッフへ挨拶をして、取材を受けて、ホテルへ帰る。
毎回同じ流れだった。
身体は覚えている。
だからこそ、その決められた道筋からほんの少し外れてみたくなった。
雨音だけを聞きながら四、五分ほど歩くと、人通りの多い大通りへ出た。
信号待ちの人々。
笑い合う学生。
肩を寄せ合って歩く恋人たち。
そして、すれ違いざまに一瞬だけ視線を向けてくる通行人。
その視線の意味を、碧葉は知っている。
知っているはずだった。
けれど、今はそれを確かめる気力すら湧かない。
誰かがスマホをこちらへ向けている気配も、どこか遠い出来事のようだった。
夜の街だけが、今日という一日を惜しむように明るかった。
そのときだった。
