雨誰を穿つ




なぜだかここに居たくないという気がして徐に楽屋を出ると、人の流れを避けるように裏口から細い路地へ出た。


雨はいつの間にか本降りになっていた。

春先の雨は雪ほど冷たくないはずなのに、頬へ触れる雫だけは妙に懐かしい温度をしている。

濡れたアスファルトが街の灯りを映し込み、赤や青のネオンが水面のように揺れていた。

その揺れ方だけが、どこか昔の映像みたいに遅れて見えた。

傘も差さず、そのまま歩く。

どこへ向かうでもない。

ただ、楽屋へ戻る気にはなれなかった。