もし今この手から音楽を取り上げられたら、自分には何が残るのだろう。 その問いに答えはなく、答えを探す気力さえ、もう長いこと失っていた。 廊下の向こうから、メンバーたちの笑い声が聞こえてくる。 春臣の穏やかな声に、楓磨のよく通る笑い声が重なる。その向こうで那智が短く何か返し、スタッフが慌ただしく行き交う音が続いた。 世界は今日も変わらず回っている。 自分だけが、その輪からほんの少し外れた場所で立ち止まっているような感覚だけが、季節を追うごとに輪郭を濃くしていった。