喪失の夜に、あなたがいた

「救急車を……!
 誰か、救急車を呼んでください!」

楓の声は震えていた。

明莉の肩を抱き寄せ、必死に支えようとしている。

「明莉さん、聞こえますか……?
 大丈夫です、僕がいますから……」

その声は、
 いつもよりずっと弱く、
 ずっと必死で、ずっと痛かった。

明莉は楓の顔を見ようとした。
 でも、視界が滲んで形が掴めない。

(……楓さん……)

名前を呼びたかった。
 でも声にならなかった。

周囲がざわめく。
 人々が集まる。
 誰かが泣いている。

その中で──
 重森さくらが駆け寄ってきた。

「楓……!」

祖母の声は震えていた。
 しかしその手はしっかりと楓の肩を支える。

「落ち着きなさい。
 まずは明莉さんを守るのよ」