喪失の夜に、あなたがいた

さくらの声は、どこか懐かしい温かさを含んでいた。

その時だった。

会場の奥から、
 白いドレスの女性がゆっくりと歩いてきた。

美しい。
 完璧な笑顔。
 周囲の人々が道を開く。

だが──
 その目だけが、冷たかった。

「白石玲奈さんです。
 取引先の……令嬢で」

楓が紹介する声は、どこか硬かった。

明莉は軽く会釈した。
 初対面のはずなのに、
 玲奈は明莉を“知っている目”で見ていた。

その視線が、
 胸の奥をひやりと撫でた。

会場の空気が、
 ほんの少しだけ重くなる。

影が、
 形を持ち始める前の静けさ。

明莉は胸の奥に小さなざわめきを感じながら、
 グラスをそっと握りしめた。

(……なんだろう、この感じ)

理由はわからない。
 ただ、怖かった。